こんにちは空き家の売却相談ナビです。今回は遺言と遺言能力の判例について記載していきたいと思います。自分が亡くなった後の相続財産の分け方について、自らの意思を反映させたいと希望する場合、遺言を作成しておくのが最も有効な方法です。
遺言は被相続人の最後の意思表示であることから、原則として尊重されることとなっており、遺言で指定された相続分(指定相続分)は法定相続分に優先するされています。一般的な場合に作成される遺言としては、大きく分けて、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」とがあります。
自筆証書遺言
「自筆証書遺言」とは、自分の手書きで作る遺言書です。 書店で売られている「遺言書セット」や「遺言書キット」は、この「自筆証書遺言」になります。
長所としては作成が簡単で、内容はもちろん、遺言書の作成を秘密にできる点です。短所としては遺言そのものが発見されないケースや、偽造や改ざんの恐れがあり、かえってトラブルを招くケースもあります。また、家庭裁判所での検認が必要なため、遺言執行の手続きが煩雑になります。
公正証書遺言
「公正証書遺言」とは、公証役場にて公証人に作ってもらう遺言書のことです。公証人とは、公証役場で働く公務員で、元検察官・元裁判官などをされていた方です。
長所としては紛失、改ざん等の恐れが無い事、遺言内容を争われたり無効とされる事が少ない点です。短所としては費用がかかり、手続きが面倒、更に遺言内容を完全に秘密に出来ない、証人の立ち合いが必要な点です。公正証書遺言は上記のようなデメリットがありますが実務ではもっとも多く利用される遺言方式です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の存在は明確にしつつも、その内容については秘密にできる遺言です。まず、遺言書を作成し、封印、証人二人とともに公証人の面前で、自分の遺言書である旨等を申述します。
長所としては遺言内容を秘密に出来、改ざんされる恐れが無い点です。短所としては手続きが面倒で、無効になる恐れがある点です。秘密証書遺言は実務上あまり利用されていませんが、以下のような場合には有益な選択肢となります。
- 遺言作成に費用をかけたくないが、病気等で自書が困難なため、自筆証書遺言を残す事が出来ない場合
- 毎年書き換える等、頻繁に撤回する予定がある者が、遺言作成費用を抑えたい場合
遺言書の書き方
後々のトラブルを防ぐ為にも、誰にどの財産を与えるのか、きちんと特定できるように書く事がポイントです。例えば、自宅の敷地など曖昧な表現よりも、地番、面積等を登記簿謄本や登記事項証明書どおりに記載する等、客観的で特定しやすい表現にしておく事が重要です。
遺言の悩み
遺言作成時に「遺言に記載した財産を売買等で処分できない」「遺言を残したら子供に見捨てられてしまう」などの悩みを聞く事があります。
しかし、「(1)遺言は相手方のいない単独行為であり」「(2)遺言は死後に効力が発生し(民法985)」「(3)遺言の内容と抵触する生前の処分行為は遺言を撤回したものとみなされる(民法1023)」ため遺言の作成後、財産を売買等で処分できないという事はありません。
また、「(1)遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回する事ができ」「(2)遺言者が行員胃遺言を破棄した時は、その破棄した部分については、遺言を撤回した物と見なす」「(3)遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄する事が出来ない(民1026)」ため、遺言の内容はいつでも変更でき、一般的に子供に見捨てられてしまうという事もありません。
遺言一覧
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
作成者 | 本人 | 公証人 | 本人(代筆可) |
場所 | どこでも良い | 公証役場 | どこでも良い |
ワープロソフト | × | ○ | ○ |
署名押印 | 本人のみ | 本人、証人、公証人 | 本人、証人、公証人 |
保管 | 本人 | 原本:公証役場 正本・謄本:本人 |
本人 |
費用 | かからない | 公証人の手数料 | 公証人の手数料 |
遺言能力を巡る判例
遺言を残すのには想像以上に心理的負担がかかる物です。よって私は遺言を残すのは心身の状態が良い時が残し時であると考えています。しかし、遺言を残す為には遺言能力が必要であり場合によっては遺言を残したくても残せない場合があります。下記はほんの一部ですが遺言能力について争われた判例はたくさんあります。
- 精神分裂病者でも「世話になった叔父に全財産を遺贈する」と言った比較的単純な内容の遺言をするのに必要な理解力を欠いていたとは言えないとした。
- 脳梗塞からのウェルニッケ失語症に陥った遺言者について、極簡単な事柄の理解能力すら失っており、遺言書を作成する能力は無かったとした。
- 肝硬変による肝不全のため、昏睡状態に近い患者が死亡の約20時間前にした遺言について、その内容が複雑な株式の配分計算を含んだかなり詳細で多岐にわたる物である事を考慮すると、遺言者が遺言当時、その意味、内容を理解、判断するだけの意識状態にあったとは考えられないとした。
遺言手続きまとめ
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