「積算価格で不動産価格を査定すると100万円になってしまうんだが本当にこれだけの価値しかないのかなぁ？」「実家の空き家を不動産会社に80万円で売出すことを勧められたけど、そんなに価値が低いの？」
土地値の低い地域や土地面積の狭い不動産では積算価格が低くなるため、積算価格によって査定された金額で売却すると損する可能性があります。
小さな土地にある一戸建ての積算価格
不動産の積算価格の求め方については「土地の価値を求める方法」「建物の価値を求める方法」で掲載しています。
例えば上記赤四角の土地70㎡に築40年の木造2階建て住宅(リフォーム歴なし)が建っていた場合、不動産の積算価格は下記のように計算できます。
土地の積算価格は「相続税路線価×広さ÷0.8」で求める事ができます。計算すると「24,000円×70㎡÷0.8=210万円」となります。
リフォームを全く行なっていない木造2階建て住宅の積算価格は「木造2階建て不動産の築年数と売却相場」で掲載している通り、解体費分のマイナスとなります。通常解体費は100万円程度なのでここではマイナス100万円と仮定します。
不動産の積算価格は「土地の価値+建物の価値+リフォーム価値」で求める事ができ、リフォームをほとんど行なっていない場合は「土地の価値+建物の価値」となります。計算すると積算価格は「210万円−100万円=110万円」となります。
収益還元法での利回り
先ほどの不動産の積算価格は110万円と計算する事ができました。この地域の一戸建ての家賃水準が仮に年間70万円と仮定し、客付のために必要な初期リフォーム代金を50万円と仮定するとこの物件の利回りは下記のように約40%と計算する事ができます(関連記事としては収益還元法をご覧ください)。
「70万円÷(110万円+5.5万円+5万円+4万円+50万円)=約40%」
- 不動産(土地+建物)価格=110万円
- 仲介手数料：5.5万円
- 不動産取得税：5万円
- 登録免許税：4万円
- 初期リフォーム代：50万円
- 年間家賃収入：70万円
不動産投資家からすると40%の利回りが出る投資対象は喉から手が出るほど欲しい不動産です。そのため、積算価格で査定した金額で売りに出した場合、すぐに売却できる可能性がありますが相場に比べると遥かに安値での売却となってしまいます。
収益還元法での売却相場はどれくらい？
建物の築年数が経過していて「土地の価値が低いor土地の面積が狭い」不動産では積算価格が低くなってしまうため、収益還元法で売出価格を算出した方が適切な場合があります。
経験上、地方だとしても客付(入居付)可能な地域で15%程度の利回りが出れば不動産を売ることは難しくありません。
下記は地域の家賃相場と不動産の売却相場の関係を示したものですが、簡単なリフォームやハウスクリーニングのみで客付可能な不動産の場合、通常、積算価格よりも高値で売る事ができます。
| 地域の家賃相場 | 不動産の売却相場 |
|---|---|
| 30万円/年 | 「200万円−初期費用」程度 |
| 40万円/年 | 「267万円−初期費用」程度 |
| 50万円/年 | 「333万円−初期費用」程度 |
| 60万円/年 | 「400万円−初期費用」程度 |
| 70万円/年 | 「467万円−初期費用」程度 |
初期費用には「仲介手数料」「不動産取得税」「登録免許税」「初期リフォーム代(入居者に入ってもらうために必要なリフォーム)」が含まれます。不動産投資家(不動産の購入希望者)はこの初期費用を加味した上で利回りを計算し物件を購入します。
先ほど積算価格が110万円と査定した不動産は収益還元法だと「467万円−(19万円+5万円+4万円+50万円)=389万円」と査定する事ができます(*仲介手数料19万円、不動産取得税5万円、登録免許税4万円、初期リフォーム50万円)。
収益還元法での不動産売却相場まとめ
いかがだったでしょうか？不動産売却活動に詳しくない業者に依頼した場合、おそらく見積もりが簡単な積算価格(110万円)を売却想定額として売り出し価格を決める可能性が高いです。
一方、売買に関する能力の高い業者の場合、収益還元法を利用し389万円を売却想定額として売り出し価格を決めるでしょう。
最終的な売買金額の差は「389-110=279万円」ほど大きくはならないと思いますが、能力の低い業者に依頼すると値付けが下手なため相場よりも安く売ってしまう事や全く売れないで困ってしまう事がありますので注意が必要です。
